●2004年12月議会一般質問
その1 介護保険制度の見直しについて
●1回目の質問
★介護予防について
一つ目の質問として、介護保険制度の見直しの前提として、現行の制度の問題点をどう把握しているかについて、お訊ねします。
問題点は多々挙げられると思いますが、市町村は介護保険の実施主体、つまり保険者である、という点で考えますと、介護保険の目的のひとつである、
・専門的な介護を受けることによって、要介護状態になることを遅らせることができる、あるいは介護度を軽くするなどの改善につながる。
という点がどうも実現できていない、ということが、当初の計画と大きく食い違ったのではないか、私はそういうふうにとらえております。
介護サービスの利用料のうち、要支援、要介護1の段階の方の利用が大幅に伸びました。これ自体は、措置から契約へ、いう流れの中で、潜在的な需要が掘り起こされた、という観点でみると、最もなことだと思います。
しかし、それが必ずしも、制度の目的であった、介護予防につながらず、かえって要介護度の低い方が介護度が重くなる傾向があるのではないか、との指摘があります。
来年度から具体的な検討が始まる、今回の介護保険制度の改正では、この点に大きくメスが入れられると伺っております。つまり、要支援、要介護1の段階の家事援助などを、筋力トレーニングなども含めた新予防給付に切り替えていく、という方向が出されています。
身体能力を維持することは確かに要介護状態になることを予防することができるでしょう。
しかし、身体的に、筋力トレーニングは受けられない方、家の中ではなんとか歩けているけれど、買い物やゴミ出しなどはむずかしい、などの方に対しては、それだけでは不十分だと思われます。
今のところその方々の不安に対しては、主治医の意見書等によって、新予防給付の対象からはずす振り分けが行われるとの見通しも示されていますが、こういうことを考えますと、今まで以上に、本人にあった適切なケアプランの作成がポイントになるのではないかと思われます。
また、家事援助でも、自立を促すために、介護を受ける高齢者とヘルパーさんが一緒に調理や掃除をするなど、いかにその方の残存能力を伸ばすか、という視点にたった介護に方向を変えていく、ということも言われております。
しかし、私はこれだけでは不十分ではないか、と思っております。高齢者の方々がもっている残存能力を高める、あるいは維持する、そういうことのためには、高齢者の方を一方的に「介護が必要な人」、つまり、お世話される対象ととらえるのではなく、家庭の中で、社会で、役割を果たしていただける存在とすること、それが、いつまでも元気であろうとするモチベーションを高めるためには必要なことだろうと思います。
そのためには、「生きがい通所」とされるデイサービスの内容等も、もっと考えなければならないのではないか、と思います。
介護予防という観点から、そのような点についてどのようにお考えか、お示しいただきたいと思います。
★地域支援事業について
介護保険の見直しについて、二つ目の質問です。
厚生労働省は、介護保険制度導入の段階で、地域それぞれの特性にあった制度にするために、あえて保険者を市町村にしました。
つまり、介護保険料を国民健康保険のように税にするのではなく、保険料とした、その意図は、保険料の設定も市町村で決めることができ、その枠内で、市町村が独自の施策を打ち出しやすいようにした、とされています。
「介護保険は、地方分権の学校である」と言われていますが。それは、この制度の根幹にあるのだと思います。
厚生労働省は今回の制度改正にあたって、さらに大胆な構想を打ち出しています。つまり、地域の特性にあった、というこの地域をもっと小さい単位にし、介護保険を利用する人、一人ひとりのニーズにあった制度にできるように、「地域支援事業」(これは仮称ですけれども)を推進する、という風に示されています。この地域は、構想では小学校区としたい、あるいは中学校単位と言われています。
この小学校区単位の地域に一ヶ所、包括的介護支援センターをおく、そして、たとえていうと、介護保険制度をになう社会福祉士、介護福祉士、ケアマネージャー、ヘルパーといった介護専門職、あるいは医師や看護職、PT・OTなどの医療従事者、保健婦、栄養士といった人たち。こういう専門職が介護保険制度を推進する電車であるとすると、それを地域というプラットホームがこれを支える。
このプラットホームには、民生委員、老人クラブのような高齢者のグループ、地域のボランティア、だけでなく、「地域デビューするリタイアした団塊世代」、あるいは生きがいや行き場所を求めている若者、今「ニート」とよばれる若者達が問題になっていますけれども、そういった人たちが連携をとりつつ集い、そこに企業の社会貢献活動が加わって、介護保険制度を推進する介護職・専門職の方々を支える、というものです。
この包括的地域支援センターはその性格ゆえに、小規模、多機能の施設として位置づけられています。
介護保険制度が実施されるとき、その目的のひとつとして、「必要な介護を受けることによって、住み慣れた地域でそれまでの生活の質を保ちながら老後を過ごすことができる」ということが高く掲げられていました。
この構想によって地域で高齢者の介護を支える仕組みをつくる、という目標が設定されていて、すでに介護保険制度のスタートの段階で、この介護地域支援ネットのワークつくりという構想は設定されておりました。
春日部市のプランの中でも、介護ネットワークの構築が盛られていたはずです。
しかし、介護保険実施以降、施設介護に傾きすぎる、という反省から、さらに地域介護のシステム作りを強化しなければいけない、という点から、今回の制度改正が行われるようです。
18年度からこの構想がスタートすると、これまでの特別養護老人ホームのような大規模施設への補助金はカットされ、この地域支援事業に対する交付金に振りかえられます。
特別養護老人ホームの整備をしない、ということではなく、特別養護老人ホームは、地域支援とは別枠の広域的介護支援と位置づけ、特養を終の棲家にしない、どうしても地域の介護で支えきれない時の緊急避難的施設にする、そして入所した人が家庭の状況や地域の支援体制、本人の身体状況が変化した場合には、また、地域に戻れる、というホームシェアリング、という考え方も示されています。
しかも、この交付金は支援センターの建設といったハード事業に対してではなく、あくまでも支援事業というソフトの部分に対して、交付されるとのことです。地域支援センターというのは、既存の施設を活用して、いかに充実したネットワークをつくっていくのか、ということがポイントになるようです。
介護保険実施以来、実施主体は市町村である、ということを重視して、独自の施策を構築してきた、いわば「介護先進自治体」、と呼ばれる自治体の多くは、実は、このようなネットワークを主体とするシステムを、介護保険のスタート時から着々と作り上げてきています。
18年度にこの交付金制度が実施されるようになると、実は17年度から準備を進めなくてはならないことになります。それでもちょっと遅いかも知れない、という気もします。
春日部市では、17年度、この制度改革に向けて、どのような事業を進める予定でしょうか。お聞かせください。
●斉藤保健健康担当参事の答弁
まず、介護保険の運営上の問題点につきまして、現状の課題という点も含めまして、お答えいたします。
一つ目は要介護認定者が高齢化率の上昇と比例し増加の一途を示しておりますが、この中で特に要支援、介護1の方が増加の大半であるということでございます。
要支援・要介護1という、軽度の認定者は介護の必要な状態にはなっておりますが、まだご自分の身体能力、残存機能などの力がある人たちが多くいらっしゃるわけでありますから、重度化にならないためのサービスを計画的に提供する必要があると認識しております。
二つ目は、特別養護老人ホームを中心に、施設サービスの利用希望者が引き続き増加をしているということでございます。16年度に2施設が開設されましたが、予想に反し入所希望者は逆に増加という結果になったところでございます。
施設サービスの整備の必要は感じつつも、従来の家族介護に戻すというわけではございませんが、在宅あるいは地域において支えあえる環境、サービス基盤の整備も必要になってきていると感じてきているわけでございます。
三つ目に、介護サービスの質の向上についてでございますが、これは、制度制定当時からの課題でありますが、導入期から成熟期を目指す、これからの時期といたしましては、本格的に取り組んでいく必要があると考えております。
この間、ケアマネージャーを対象とした隔月の研修会、勉強会、市内事業者協議会を中心としたリスクマネージメントの勉強会等を行ってきているところでございます。
次に、高齢者自身に役割を持たせて、生きがいづくりを考えながらのサービス提供が必要ではという質問ではございますけれども、介護保険制度は、在宅重視と自立支援を理念とし、要介護状態になることや、重度化を予防し、要介護度の軽減を図ること、また要介護状態になってもできるかぎり在宅での生活が継続できることを目指しておりますので、そうした視点から、利用者の理解の上、議員ご指摘のサービスが提供できることは必要なことだと考えております。
次に、今回の制度改正の柱でございます、新予防給付の点でございます。
これは、従来のホームヘルプサービスについては、本人の生活機能を低下させる恐れがある、単なる家事代行のようなサービスは見直しが必要ではないかと考えられているところであると思います。
制度の改正の考え方として、外出が困難など個々のケースにおける必要性の大小に関わりなく、一律にサービスを制限するというようなことがない、との基本的な考えにたって検討がなされているところであると聞いております。
また、デイサービスにおきましても、現在実施しておりますカリキュラムの中に予防に有効であるものも少なくないと認識しておりますので、予防または機能訓練に必要なものに、充実されていくものと考えておるところでございます。
次に、現在、仮称でございますけれども、地域支援福祉空間整備等交付金、これにつきましては、現在、国において17年度実施にむけ検討がなされておると聞いております。
内容といたしましては、小規模の特養、グループホーム等の施設整備、地域支援センターや高齢者の在宅生活を支えるための情報網などのソフト整備などが考えられております。今後において、国の策定方針を注意深く見てまいりたいと考えております。
なお、地域包括支援センターの基礎であります、在宅介護支援センターは当面、整備すべき目標とした中学校区1つについても、今年度で整備が終わったところでありますので、今後は内容の充実に努めていく考えでございます。
●2回目の質問(要望)
先ほど、地域支援福祉空間整備等交付金が17年度から実施されるとうかがいました。当初示されていた18年度よりも1年早く実施されるようです。
在宅介護支援センターを10ヶ所整備したということで、できるだけ地域で支えるシステムをつくっていこうとしている姿勢は、よくうかがえました。
しかし、見てみますと、まだ、その在宅介護支援センターの中身なんですけれども、包括的に地域で介護を支えていくことができるための、先ほど申しました、多機能の施設という感じからはほど遠いというふうに思われますので、是非、既存施設を活用しまして、本当に包括的に地域介護支援のできるセンターというもののシステムを、きちんとつくっていただきたいと思います。
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