一般質問(2006年3月13日)その2
高齢者福祉施策及び介護保険改正に伴う市の施策について
■1回目の質問
高齢者福祉施策及び介護保険改正に伴う市の施策について、今回は「介護予防事業の充実」という点を中心にお伺いいたします。
介護保険制度が導入されて以来、介護の社会化は急速に進みました。
それによって、家族や親族以外に、介護の手を求めることに対する抵抗感が薄れました。そのことは大きな功績であると思います。
介護保険の導入には、もう一つの目的がありました。それは専門家の手による介護を受けることによって、要介護状態になることを遅らせる、あるいは介護度が重くなることを予防する、という「介護予防」の観点です。
しかし、介護の社会化が進んだことが介護サービス給付の伸びにつながったこと、特に、要支援や要介護1、2といった軽度の方の介護サービス給付が伸びたにもかかわらず、それが必ずしも介護予防、あるいは重症化の予防につながらなかった、逆に介護度が重くなる傾向があることが指摘されてきました。
そこで、前回も申しましたが、今回の改正は、
@施設から地域へという、在宅介護の重視
A高齢者の個人の尊厳を守る
という2つの点と共に、要介護状態になることを予防する、あるいは介護度が重くなることを予防する、「介護予防」に重点がおかれることなりました。
そこで、介護予防について、春日部市としては、この「予防」という観点から、第1期、第2期の施策でどこに問題があったとお考えでしょうか。
第2期までの介護保険制度の中の介護予防では、なぜ、目的が達成できないのか、という点から指摘されている主な理由が2点あります。
@ お年寄りの生活を支えるために、どのような介護サービス給付が必要なのか、その計画を策定するケアマネージャのほとんどが、事業所に属しており、所属する事業所の事業にあてはめて介護プランをたてる、いわゆる「囲い込み現象」が起こったため、必ずしも介護を受ける人が求める介護プランが作成されなかった、ということがあげられています。
A もう一つは生きがい通所サービス、いわゆるデイサービスなどが画一的で、ことに認知症の方を対象とするプログラムが組まれていて、なかなか予防に通ずる通所サービスになっていなかったのではないか。
この2点があげられています。
そこでまず、ケアマネジメントの体制について伺います。
4月からは制度の改正によって、地域密着型サービスとともに介護予防の核ともなる「地域包括支援センター」の設置が必要となります。
今議会では春日部市の構想が示されましたが、春日部市が設置する8ヶ所とも、民間の介護保険事業所への委託となります。
となると、その事業所に置かれる支援センターに属する主任ケアマネージャが、今までの介護保険制度の中で問題点として浮かび上がってきた「囲い込み」を排除し、本当に介護を受ける人のための予防につながるケアプランが作成できるのか、その点について疑問が残るのですが、その点についてはいかがお考えでしょうか。伺います。
2つ目として、従来の生きがい通所が必ずしも介護予防につながっていない、という点について、今後春日部市はどのように対応するのかについて伺います、
自治体によっては、この点を解消するため、ごく小規模の、いわゆるミニディサービスを身近な場所に展開し、それぞれ、一人ひとりの関心に合わせた、あるいはたとえ認知症であってもまだ残された残存能力を生かした活動が可能になるように、というきめ細かな事業を展開しているところがあります。
もちろんこのような小規模な事業は採算がとれませんから、営利事業所に求めることはできません。だからといって、必ずしも行政がすべてを担うのではなく、地域のボランティアさんとの協働によって行われている例が多いと聞いています。
そのほか、気軽に立ち寄れる憩いどころや、最近マスコミに報道されることが多い、定年退職した人たちのたまり場など、ごくごく身近なところにある場から、地域ネットワークを作り、高齢社会に向けて備えていこうという試みもあります。
そのような仲間づくり、生きがいつくりも含めて、市が取り組みにくい事業については地域の方々の協力を得るなどして、どのように介護予防施策を展開しようと考えているのでしょうか。その施策はおありでしょうか。お示しください。
●米山福祉部長の答弁
高齢者福祉施策について、お答えいたします。
まず、来年度から友人つくり、生きがいつくりに留意した事業を取り入れるかどうかについてお答えいたします。
「生きがい活動支援通所事業」は、老人デイサービス等において、生活指導、日常動作訓練、健康状態の確認、入浴、給食サービス及び陶芸、園芸等の創作活動について、週一回を限度として実施しております。
対象につきましては、介護保険制度における要介護者・要支援者に該当しない方で、かつ、なんらかの障害、あるいは認知症の症状はあるが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している方を対象としており、目的としては、家に閉じこもりがちな方に対して生きがいのある生活を営ませることにより、要介護状態への進行を予防するものです。
この事業内容に組み込まれている日常生活訓練から、趣味活動等のサービスを提供することは、心身の低下を妨げ、閉じこもり症候群と呼ばれている状態を予防するもので、高齢者にとっては大変効果があると認識しているものです。
従いまして、今申し上げました事業内容の中で、議員ご質問の主旨が生かされれば、と思っているところです。
また、気軽の立ち寄れる憩いどころや、定年退職した人たちの溜まり場などを通して、地域の協力が得られる体制づくりを展開しようとする施策を市ではもっているか、とのことでございますが、これに対しては並木議員にお答えしました通り、人との会話や外出の機会があまり多くないお年寄りに対しては、社会福祉協議会が中心となって、現在、藤塚の満寿美会をはじめとする生き生きサロンが地域を拠点に、それぞれ月一回開設されている情況が見受けられます。
この事業の主旨につきましましては、大変大切であると認識しているところでございます。
せっかくの社会福祉協議会の事業でございますので、今しばらくは活動等の推移を見守ってまいりたいと考えておりますが、今後、高齢者のニーズがさらに高まってくるようであれば、民間活用をはかりながら、憩いどころや溜まり場などのふれあいや交流の場について、高齢者に対する日常生活の支援の強化に努めて参りたいと考えているところでございます。
●中島健康保険部長の答弁
介護保険事業についてのご質問のうち、まず、介護予防という観点から、第一期、第二期の施策でどこに問題があったのか、そしてその反省の上に立ってどのように独自の施策を展開するのかにつきまして、お答えいたします。
現行の介護保険のサービスにつきましては、何らかの支援や介護が必要な高齢者について、できないことを補う介護サービスを提供してまいりましたが、要支援などに認定された軽度者においては、ややもするとあまり体を動かさない等によって心身機能の低下や要介護度が悪化する傾向がありました。
このため、今回の制度改正では、できることを引き出す介護サービスを提供し、心身機能を維持・改善し、できるかぎり自立した生活を目指すため、介護予防を進めていくこととなったものでございます。
これまでの市の介護予防事業につきましては、転倒予防を中心に、講話や介護予防体操などを行う介護予防教室を開催し、昨年度は538名の方々に参加頂き、介護予防に役立てて頂いております。
しかしながら、1回当たりの参加人員が12名程度と少なかったことや、体操を継続して実践できない、などの課題が残りました。
そのため18年度からは、介護予防事業の一環として、いつでも無理なくできる「春日部そらまめ体操」の普及を進めて参ります。
具体的には、介護予防に関心のある「いきいきクラブ」や地域の高齢者団体が「春日部そらまめ体操」を自主的に実践できるように指導者を派遣することや、「そらまめ体操」のリーダーなどの養成を行ってまいります。
また、生活体力測定会を開催して、測定会と同時に「そらまめ体操」などを行い、介護予防のための体力づくりの動機付けとしてまいりたいと考えております。
続きまして、地域包括支援センターの設置により、今までの介護保険制度の問題点として浮かび上がってきた「囲いこみ」を排除し、本当に介護を受ける人のための予防につながるケアプランが作成できるのかについて、お答えいたします。
ご指摘のように、介護保険制度の実施後、ケアプラン作成において、ケアマネージャが所属する事業所が行う介護サービスを優先させるといった事例があったことは聞き及んでおります。
このたびの制度改正では、介護予防ケアマネージメントについては、要支援状態になる前の方々、及び要支援氈Eの方々に対し、一貫性や連続性をもって、地域包括支援センターが一元的に担うこととされ、中立性や公平性が求められるところでございます。
そして、中立性、公平性を確実にするため、学識経験者や市内各種団体及び介護保険の被保険者などの方々で構成される、「地域包括支援センター運営等協議会」を設置いたします。
この協議会には、「地域包括支援センター」の事業計画、また収支予算やセンターの作成するケアプランが特定の事業者に偏っていないかなどにつきまして、調査・審議していただくものでございまして、地域包括支援センターの、適切、公正かつ中立的な運営の確保に努めてまいります。
★2回目の質問
1回目の答弁をお聞きしまして、今までのできないことを補う介護予防からできることを引き出していくことによって、できるだけ自立した生活ができる介護予防になる、と、これもこれから実施されることですので、是非期待していきたいと思いますけれども、ただ、私は今まで介護保険制度が導入されてから、とても気になっている点が一つあります。
それは介護サービスの供給のほとんどが、事業所によって行われている、ということです。先ほどのケアプランに関しては、今後、中立性や公平性が保たれるということですけれども、事業所によって行われている、という実態から、いかに手厚いサービスが仮に提供されても、それはサービスなんですね。
ヘルパーさん対利用者さん、事業所対利用者さん、という関係性の中で、介護が営まれている、という実態があるんだと思うんです。
介護保険制度の大きな目標の一つには「個人の尊厳を守る」という点がうたわれていますが、でいくら年老いて、できないことが多くなったとしても、その方には今まで生きてきた長い歴史があるわけです。
その歴史が利用者さん対ヘルパーさん、あるいは利用者さん対事業者ということになると断ち切られてしまう。これが介護予防につながらないことにつながっているのではないか、と私は考えております。
たとえば地域の中での支え合い、ということであれば、利用者さん対サービス提供者という関係ではなく、隣の○○さん、ご近所の○○さん、という個人の生きてきた歴史が大事にされる関係性が保たれる、その中で個人の尊厳が大事にされていく、ということもあると思うんですね。
さらに、30人、50人といった大人数が、一斉に同じ日課ですごすのではなくて、少人数で過ごす、ということも必要だろうと思いますし、たとえば配食サービスも介護予防に含まれていく、ということですけれども、ただ単に、食事を届けるということ、これは安否確認も入るということですけれど、それだけではなく、お昼を一緒につくって食べる、という中で、調理の過程の中で自分のできることを分担する、ということもまた、可能になってくると思うんですね。
昨日、NHKの「人間ドキュメント」でやっておりましたけれども、調理リハビリといっていましたが、なによりも大事なことは、個人の尊厳を守る、ということは自分でもまだ、人様のお役に立つことができるのだ、と思えることが大事なんだろうと思うんですね。
それは一律にお年寄りを介護される側というふうにしてしまうことではなくて、どんな形でも人様のお役に立てることがまだあるという喜び、そういうことが生きがいにもつながり、尊厳を守ることだろうと思います。
緑小学校の「ふれあいサロン」のお話を伺ったとき、あそこにいらっしゃるお年寄りの、何が一番変わったのか伺ったら、「おしゃれをするようになった」とおっしゃってました。
子どもたちと接するお年寄りたちが、自分たちの今まで生きてきた知恵を伝えるということで、本当に生きがいをもって、生き生き暮らす、それは趣味を同じ高齢者の中で楽しむことも大事ですけれども、そういったどんなに認知症の方でも、自分がもっている力で人様のお役に立つ、それはやはり介護保険制度の中だけでなく、地域の支え合いなのではないか、というふうに思います。
最後にこの点について、市長に伺いたいのですが、国は次々にいろんな制度をつくってまいります。
「介護保険制度」もそうですし、「障害者自立支援法」もそうです。
しかし、この国の制度で不足している点を、どう補っていくのか、これが市町村に課せられている役割なんだろうと思うんですね。
それが充実してくれば、介護保険、今度保険料が大幅にアップするということで問題になっていますけれども、保険料の上昇にもつながらないし、財政的な面でも後々プラスになるだろうし、お年寄りも地域で安心して暮らせる、ということにつながるだろうと思うんです。
そのためには、今後の介護保険の第三期の3年間は、自治体にとっては本当に正念場になるだろうと思います。是非、市長は前回は「地域コミュニティの再生」とおっしゃっておられました。その点で、市長はどういうお考えなのか、伺いたいと思います。
● 石川市長の答弁
介護保険制度につきましても、高齢者に対して地域の中で介護が予防できるような地域づくりをめざし、ゆくゆくは地域の自立支援につなげていきたいと考えています。
市民が住みなれた地域の社会の中で、安心して暮らせるようになるためには、高齢者・障害者等の福祉サービス等の充実を図ることが第一でありますが、地域社会の支え合いは、行政だけでは限度があります。
高齢者・障害者の社会的弱者を、行政の縦割りから横のつながりの中で、地域の中にある自治会・ボランティアなどを含めて、援助・協力・協働により支え合うことは理想的な社会でございますので、この体制づくりに対しては市としましても積極的に支援してまいりたいと考えております。
■3回目(要望)
障害者福祉施策と高齢者福祉施策については、横のつながりを大事にしながら、やっていく、また、当事者の声をきちんと反映してやっていく、というお答えをいただきました。
昨日もある会合でいろいろ話が出たのですが、市民の皆さんは、地域の中で支え合うものをつくっていきたいという思いがあります。それは私たち団塊の世代にとっても、明日は我が身ということで、やはり高齢者が増え、4人に1人が高齢者になる、という時代を見据えて、地域の人たちは力を合わせたいという思いがありますので、まずそのために何が必要か、というのは行政の後ろ盾と場、なんですね。
これは前回もお話しましたが、そういう人たちが集まって活動する場がない、ということでした。
高齢者憩いの家などを使って、というお話でしたけれども、高齢者の方だけだなく、そういう人たちを支えていく場、というものに対して、是非、行政的支援をお願いしたいと思います。
それから、地域包括支援センターの中では、これから地域包括支援ネットワークをつくっていくということも、重大な課題の一つになっていくと思うんですね。
これは2回目の質問でちょっと落としてしまったのですが、その地域包括支援ネットワークというのは、地域の中の様々な人の支援、それは介護保険制度の事業だけではなしに、そういうネットワークをつくっていくということもうたわれていますので、是非、包括支援センターの中で、当面は8カ所で、そこに3人の専門家の方だけではかなりむずかしいものがあるかも知れませんけれども、その地域包括支援ネットワークの構築に力を入れていただきたい、そのために是非、行政もがんばっていただきたいと思います。
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