●2007年6月議会一般質問
ーその1ー学力テストについて
★ 1回目の質問
本年4月、41年ぶりに全国学力調査、通称学力テストが行われました。
この学力調査について、2点お伺いします。
この学力調査は、
「国の責務として果たすべき義務教育の機会均等や一定以上の教育水準が確保されているかを把握し、教育の成果と課題などを検証する」
ことを目的とする、とされています。
そのため、
「すべての児童生徒の学習到達度を把握するために全国的な学力調査を実施し、各地域の教育水準の達成状況をきめ細かく適切に把握する」
とのことです。
今まで国が実施してきた調査に、「教育課程実施状況調査」があります。
この調査は、小学校5,6年生に対しては、国語・算数・社会・理科の4教科について、中学校は1〜3学年について、国語・社会・数学・理科・英語の5教科について実施してきました。
そのかわり、全学校を対象とするのではなく、対象学年の8%、教科別にしますと1〜2%の抽出調査にとどまっています。
それに対して、今回の調査は先ほど触れましたように、「すべての児童生徒の学習到達度を把握するため」
として、全学校を対象とする、悉皆調査としています。
また、これに加えて、
・学校に対しては、各学校における教育条件の整備状況を把握するための調査
・児童、生徒に対する意識調査、これは学習意欲や生活実態、学習環境の把握のための調査とされています
この二つの調査の結果を把握し、分析を行い、学習意欲や生活実態、学習環境と学力との相関関係を多面的に把握・分析することがねらいとされています。
そこで質問の第1点目ですが、今年度実施された調査の内容について、本当に先ほど触れました。この調査のねらいを達成できるものであったのかどうかについて伺います。
学力調査だけでなく、各学校に対する調査項目や、児童・生徒に対する調査項目について、どうお感じになっているのかについても、率直な感想を併せてお答いただきたいと思います。
学力調査について、2点目です。
教育委員会としては、この調査結果を今後の教育の充実のためにどのように役立てていくお考えなのか、伺います。
文部科学省は、
「今回の調査はあくまでも、多面的な学力の一部分をはかるものである」
としています。
だとするならば、今回の調査結果だけで、つまり、多面的な学力の一部分だけの調査結果から、各学校や児童・生徒の学習面の特徴や課題といったものが把握できるのか、大いに疑問が残ります。
とりわけ、児童・生徒の学習環境、あるいは家庭における生活状況と結びつけて学力について分析するには、今回把握できた一部分の学力調査だけではかなり無理があるのではないかと考えられます。
そういった面も併せて、どのようにとらえておられるのかについても、お答えいだだきたいと思います。
★ 関根学務指導担当部長の答弁
1点目の、今年度実施された調査の内容は、児童・生徒の学習到達度や教育水準の達成状況を把握し、学力と学習状況との相関関係を多面的に把握・分析する、というねらいを達成できるものであったかについてですが、今回小学校6年生と中学校3年生において行われた国語と算数・数学の2科目について、調査問題を分析いたしました。
問題全体としては基礎的な知識の確認と実生活に即した場面から知恵を絞り、解決する問題が出題されており、子どもたちに身につけさせたい力、という観点の元、学年相応の基礎的知識と生きる力を育むための実践的な知識を求めているものでした。
このことから、今回の調査内容で、国語と算数・数学の2科目について、学力についての把握が一定程度できるであろうと考えています。
教育委員会としましては、子どもの学力とは、「読み・書き・計算」に代表される知識技能に止まらず、関心・意欲・態度・思考判断・表現処理などがあり、その他にも、見る・聞く・話すであるとか、学び方や学ぶ意欲など広範囲にわたるものであるととらえており、今回の調査だけで子どもの学力全体を判断することは困難であると考えており、「あくまでも多面的な学力の一部分をはかるものとする」という文部科学省の見解と同様です。
次に学力と学習状況との相関関係を、多面的に把握・分析する、という点につきましては、現在、文部科学省等において分析が進められておりますので、進捗状況を見守って参りたいと考えています。
いずれにいたしましても、子どもの学力低下が大きな社会問題となっております。
この根拠として、OECDによるピサ調査などの国際学力調査があげられておりますが、日本では、全国的な学力調査は、昭和39年以来43年間、悉皆調査ではなくなった昭和41年以来では41年間実施されておらず、子どもの学力、学習状況を把握・分析するために今回、はじめて実施されることとなったものです。
今後、分析や検証が行なわれ、さらに結果を累積し、改善を図ることにより、意味のある調査になるものと考えております。
いずれにしましても、教育委員会といたしましても、これまでの学力向上の取り組み、とくに教育に関する三つの達成目標への取り組みや、個に応じた指導の充実を推進して参ります。
次に学校並びに児童・生徒に対する調査項目についてどう感じているかについてですが、学校質問紙につきましては、学校規模や施設・設備に関すること、各学校における特色ある取り組み等、学校における教育活動の実践状況を問うものであり、学校の現状を相対的に捉えるものであると感じました。
次に児童・生徒に対する質問紙についてですが、今回の調査では、昨年11月から12月にかけて実施された予備調査を踏まえて、当初文部科学省から示された質問例から、
「自分は家の人から大切にされているか」
「あなたの家には本が何冊くらいありますか」
といった質問が削除されるなど、プライバシーに配慮した内容へと改善がはかられたと感じております。
今回の質問については児童・生徒の学習に関する意欲、方法、環境や生活の様々な側面について、全国的な傾向と児童・生徒の生活実態の特徴を把握する上で一つの資料となりうるものと考えております。
2点目の「全国学力・学習状況調査」の結果を、今後の教育の充実のために、どのように役立てていくのか、という質問について答弁します。
今回実施されました「全国学力・学習状況調査」は、児童・生徒、一人ひとりに返却される結果を通しまして、児童・生徒本人のみならず、保護者にも学習状況等の理解を深めることができ、今後の学習等に生かすことができるものと考えております。
また、各学校では、子どもたちの生活や学習実態を、文部科学省の学習状況調査と、すでに埼玉県で進めている「教育に関する三つの達成目標」の調査などと比較検討し、指導法の改善に役立てることにより、子どもたちの学力向上に生かせるものと考えております。
このように、今回の「全国学力・学習状況調査」の結果を、一人ひとりの児童・生徒の学力、学習状況を把握する資料の一つとして、今後の学習指導に役立てることができるものと考えております。
なお、その結果が示されるのは9月頃の予定ですが、国立教育政策研究所では調査の実施後、早い時期に各学校の学習や指導の検証・改善に生かすことができるよう、開設資料を各学校に配布したところです。
解説資料では,正解の条件やその解答が示され、学校において結果分析や指導法改善、問題作成に役立てられるようになっております。
教育委員会におきましては、調査結果が出る前にも、学習指導の工夫・改善等に活用するよう、各学校に指導してまいります。
★2回目の質問
ご答弁の中で、あくまでも今回は多面的な学力の中の一部の学力の調査であるということですね。
問題については、概ね基礎的な学力と、生活の場面に照らした生きる力を育むための実践的な力もはかるものであった、というお答えをいただきました。
私も全学年の問題を全部見ました。なかなか面白い問題だなというふうには思いましたけれども、中で気になったのは記述式の問題なんです。
記述式の問題があるというのは、非常に大事なことだと思うんですけれども、では何を正解とするのかというのは、これは常にむずかしい問題でして、こういった判断がいろいろあるようなことを統一的な全国の学力調査の中で、どういうふうにこれは採点されることになるのでしょうか。
これはやっぱり調査結果が各学校に戻ってきたときに、ここは現場の先生方のところで、細かくチェックしていただいて、記述式の問題というのは非常に大事な問題だと思いますので、その記述式の問題に関して答えた児童・生徒さんの気持ち、なぜこのように答えたのか、という気持ちを十分汲み上げていただきたいと思いました。
それからとくに小学校6年生と中学3年生の国語Bなんですけれども、4月という新学期の段階で、出題範囲が6年生課程、中学3年生の過程にわたるものがありましたので、ちょっとむずかしいんじゃないかな、という問題もありましたので、そういうところも改善点なのかな、という考えがありました。
それから学力調査の面ではなくて、児童・生徒さんの質問調査の項目なんですが、これは匿名性がきちんと確保されている調査じゃないので、これで本当にありのままに回答できるのかな、という懸念があるんです。
皆さん素直にきちんと実態をそのまま書くというふうに思いたいんですが、やっぱりこういう調査が出されたときに、自分をよく捉えたいという意識があると思うんですね。
それからもう1点なんですが非常に答えにくい、一週間の中の平均をとればいいのか、前日のことを書けばいいのか、というあいまいな問題もありまして、児童生徒に対する質問項目というのが、どの程度子どもさんの生活実態を反映できるのか、把握できるのか、という疑問をもちました。
で、そういうことを踏まえてなんですけれども、これは多面的な学力のうちの一部をはかる調査であると。
すると文部科学省の方では、児童生徒の学習環境あるいは家庭における生活状況というものと学力を結びつけたいというねらいがあったようですが、必ずしもそのねらいが達成できるのかなという大きな疑問があるんです。
ですから、それが一人ひとりの生徒さんに結果がかえってきたときに、十分学校の方で指導していただき、また、先ほど今回の学力調査の結果だけではなしに、今まで県の方でやっている「三つの目標達成調査」なども加味して、本当にこれから春日部市の児童生徒の学力の向上、あるいは学習環境の向上に生かしていきたいということですので、必ずしもこの学力調査だけで一面的な判断はされないとは思いますけれども、調査を生かすために、是非、教育委員会としてそこら辺の配慮をしていただきたいと思います。
序列化ということに対しては、そういうものは一切しないという3月議会での答弁がありましたので、それは結構です。
最後に、実はこの学力調査の実施に当りまして、小学校では実名記名でテストを行なう、ということが、個人情報が漏洩する心配があるということで、地方からいろいろ声が上りました。
春日部市ではそこに迅速に対応していただきまして、個人情報保護審議会の方にかけていただきまして、小学校も番号式で調査する、という動きが学力調査実施前にありました。
これがいい例だと思うんですが、地方から声をあげていって、文部科学省が出していた方針を、今回は変えることができたわけですよね。
ですからこういう全国的な学力調査が行なわれたのであれば、この学力調査をやった、一番よくご存知なのは、現場の先生であり、各市町村の教育委員会だと思いますので、改善点、こういう調査にしてほしい、という声を、きちんと文部科学省に届けていただきまして、77億円、という巨費をかけた、悉皆調査が必要なのかどうか、抽出調査ではいけないのかどうか、そういった観点も踏まえて、是非要望をあげていただきたいと思いますので、そういう点についてもお答えいただきたいと思います。
★ 関根学務指導担当部長の答弁
現場の学校教師や市町村教育委員会の要望等を文部科学省に伝え、改善していく必要があるのではないか、ということについてですが、今回の調査に関しましては、議員ご指摘の問題の難易度や調査項目、また実施時期や全数調査を含めた調査方法につきまして、現段階においては、学校等からの要望等は伺っておりません。
今後、各学校からの要望があった時点で、それらを整理し、市教育委員会の要望や提言等も併せて、教育長協議会や教育委員会連合会などの機会をとらえ、国や県に伝えてまいります。
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